| 【千鶴編U】 (千鶴side)
___次の朝___
「・・・学校行きたくない。」
昨日、あれからどうしたのかはよく覚えてない。 確かお兄ちゃんが私の叫び声を聞いて、とんできたけど私は叫び続けていて・・・
ドウシテ?
それは・・・。
偽物の爽君がいて・・・ “ドクンッ・・・”心臓が小さく跳ねた。 だって,
あんなの爽君じゃない・・・から・・・。
_______四か月前_______
私がまだ、調理部に入っていない頃の話し。
「悠木さんっ」 この高校に入学して、まだまもない放課後。 帰り支度をしていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「今日ね、皆でカラオケ行くんだけど・・・悠木さんも、どうかなって思って。」 この子は確かクラスメートの橋川唯。学級委員長でかわいいと有名な子。 「お誘い嬉しいけど、私はそんな暇じゃないの。ごめんなさいね」 「う・・・うん。こちらこそごめんなさい、また今度。」
今の私には“作り笑い”というのがぴったりなんだと思う。
「なによ、あれー」 「感じ悪ーっ」 「気にすることないぜ、橋川。」 「そーだよ。俺らだけで行こうぜー?」
まただ・・・。私はいつも悪者。 仕方がないのだけど、 やっぱり辛い。 私は鞄を持って校舎を出、帰り道を急いだ。
「カラオケ・・・行きたかった・・・。」
___家
「ただいま帰りました。」 大きな扉を開けると、そこは無駄に広い部屋。 「何をしていたの?遅かったじゃない。今日は大事なパーティーがあるといったでしょう?」 「すいません、莉衣叔母さん。」 「もういいから早く着替えてきなさい。」 「はい・・・。」
あの人は莉衣(リイ)おばさん。私が幼い頃亡くなった両親の代わりに、悠叔父さんと一緒に私を育ててくれた人。 けど、叔父さんたちは超一流会長だったお父さんの後を継ぎ、大金持ちになった途端。 パーティーや講演会などに私を連れて行き婚約者を決めようとしていた。
そうすれば、自分の会社をもっと大きくできるから・・・。 私は真っ赤なドレスを身にまとい、お化粧を済ませて髪やアクセサリーも整えた。 「くだらない・・・。」
できるならこんなもの今すぐ脱ぎ捨てて、今時風の制服を着てカラオケで朝まで歌い続けたい。
お父さん・・・お母さん・・・。 もうこんなつまらない事はしたくない。 もっと自由に・・・。
「千鶴ー!行くわよー!」 「・・・はい。」
ちょっとした一息も終わり。私は一生、人形として生きていかなければならないのは変わらない・・・、
車で一時間ほど。もうあたりは真っ暗で、明るい街のネオンが光る時間。 大きなビルに入って扉を開ければ、もうそこは、パーティー会場。
「ではまた後で。」 「はい。」
いつもと同じ言葉で別れ、適当にふらつく。時々、少しお酒も飲んじゃったりして。 「あれっ!もしかして悠木さんかなぁ?」 「へ?」
「やっぱりそうだぁ!君んちも王手会社の家庭だったんだね!」 「クラスの・・・」
「飯塚恭平だよー!」 こういう男は苦手。ヘラっとしてて、何考えているのかわからない。 「それにしてもやっぱりすっごい美人だね、ドレス似合ってるよ」 「ありがとう」
これもくだらないモノにすぎない。冷たくあしらって、「失礼します」 と言い、会場を後にしようとしたとき。
「待ってよ?」
腕をつかまれて、鋭い目線で見つめられた。 さっきとは違う・・・、1トーン低いテノールは、お世辞にも優しい声などとは言えなかった。
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