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あの日、あの時
[1]mau:06/27(土) 18:50:50 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
あの日、あの時。
僕と彼女が出会ったとき。
真っ白な髪、真っ白な肌。
そして、あの青い瞳の色。
僕はあんなに美しい生き物を見たことがなかった。
[8]mau:06/28(日) 00:24:57 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
「久しぶりねえ、悠ちゃん、早代さん」
ゆま婆が、厳格そうな表情を崩して言った。
「……あら、雅もいたのね」
姉さんに対してはいつも冷たいゆま婆。今年もそれは一緒だった。
「さ、おいで、おいで」
ゆま婆が、家の中へ僕等を手招きする。
「いや…僕は…」
「悠、早く来なさい」
家へ入るのを断ろうとしたが、母さんにピシャリと言われて行かざるを得なかった。
それを見ていた姉さんも僕に続こうとしたけど「雅は来ないでね」と、母さんではなくゆま婆から言われて(このとき母さんが発言したら完全に無視する)、苦笑し、僕に手を振った。 省6
[9]mau:06/28(日) 01:03:42 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
ゆま婆の部屋まで、どれだけ長い廊下を歩いただろう。
ゆま婆は部屋に到着して腰を下ろすや否や僕に言った。
「悠ちゃん、しばらく見ない内に、大きくなったねえ。もう6年生だもんねえ」
歳を感じさせないハキハキとした声、綺麗な顔立ち、曲がってない腰、少し白髪の混ざった髪…姉さんに対しての態度…。
「ゆま婆も全然変わってないねえ」
ゆま婆の口調を真似て言ってみた。
ゆま婆は目を細めて嬉しそうに笑った。
「本当、お変わりないですわね。由真さん」
「早代さんこそ。相変わらず綺麗ですよ」 省47
[10]mau:06/28(日) 22:43:01 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
「姉さん」
ゆま婆の家を出ると、うつ向き、いじけたように壁にもたれ掛かっている姉さんがすぐに視界に入った。
「…悠」
そう言ってパッと顔を顔を上げて満面の笑みを浮かべる。
「遅くなってごめん」
「ううん、良い」
首を軽く振って、僕に抱き着く。
「悠、好き。世界で一番好き」
「…うん」
僕は少し背伸びをして頭をポンと、あやすように叩く。
「さて、」
シリアスな空気は僕等に悪影響を及ぼすだけなので、以上で終了することにした。
「何して遊ぼうか、姉さん」
姉さんを振り払うように胸板から離し、表情を一変させる。 省22
[11]わわわ:07/01(水) 16:19:03 HOST:FL1-125-197-125-221.stm.mesh.ad.jp
怖いいいいい
[12]mau:07/01(水) 18:22:53 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
>>11わわわ様
まだそんなには怖くありませんが…
ありがとうございます(^ω^)*
[13]mau:07/01(水) 19:25:03 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
「本当に真っ白」
生暖かい風に、姉さんの髪が揺れている。
「でもさあ」
邪魔っ気そうにその髪を払い除けながら、姉さんは続ける。
「夏に桜ってのも変だよね、今更だけど」
「あー…まあ…さくらんぼとか夏が旬だから」
僕が真面目な顔で言うと、姉さんは苦笑いで「いやいや」と否定した。
蝉の声が聴こえて、生暖かいが頬をなぞって…。もう真夏だというのに、この桜を見ていると季節感が狂ってしまう。
「…ねえ、一本くらい…良いかな?」
姉さんが唐突に口を開いた。
背伸びをして、白く細い桜の枝を掴んでいる。
「一本くらいって、何を?」 省28
[14]mau:07/02(木) 18:33:16 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
先ほどまで吹き出すように出ていた血は、もう治まりかけていた。
「なん、で、桜の、枝から……血が…」
姉さんは桜の枝を、汚い物を放るように地面に落す。
僕はその様子を放心して見ていた。
地面に転がっている枝が、人間の腕に見える。
「駄目」
不意に聴こえたそれは、幼い女の子のような声だった。
姉さんもその声に気付いたらしく、ハッと顔を上げた。
「桜は人を狂わせる。近寄っちゃ、駄目」
僕も姉さんも声の主を必死に探すが、見つからない。
「桜の枝は、お食べ。見つからないうちに。早く、お食べ」 省18
[15]mau:07/04(土) 02:07:01 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
髪も肌も、着ている着物も真っ白だ。
それこそ、先ほど姉さんが折った桜のように。
けれど、目は青空のように青い。
顔立ちは、遠くから見ても分かるくらい美しい。
「あなた達、桜の枝を折ったの?」
機械的な口調で、僕等に訊いた。
訊いたというより責めているような攻撃的な言葉だ。
「す、すいません」
口を開いたのは姉さんが先だった。
「綺麗だったから、つい」
気まずそうに顔を歪め、うつ向く。
今の空気で、よく口が聞けるな。さすが姉さんと、今の状況で姉さんに感服する自分を嫌悪しながらも、一緒に頭を下げる。 省20
[16]mau:07/04(土) 02:18:05 HOST:f2sGcxs1u8fkakXa_softbank.co.jp
あの桜は、人を狂わせる。
この村の多くの人は、その桜を"狂乱桜"と読んでいるらしい。
この桜に無礼な行いをした人間は、誰であろうと必ず狂人になってしまう。
狂人になるだけならまだしも、その狂人が一見まともな人間に見えるのが厄介だ。
一見まともな狂人は、自分が狂ったことに気付かず、自分の周辺の人々が狂ってしまったと嘆き、悲しむ。
そして言うのだ。
このままでは、自分が狂人になってしまう…。だからその前に、だからその前に、
自 分 が 、 全 て を 壊 す。
そうなってしまっては、もう止めようがない。 省8
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