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日々の生活の中で、常に頭の中にあること。 『お兄ちゃんを忘れる』 そして、毎日毎時間毎分毎秒欠かすことなく頭で呟いている。 「忘れる」
そうやって自己暗示をし続けて、季節は静けさを感じさせる梅雨になっていた。 毎日、雨ばかり。 不思議とそんなに嫌じゃない。むしろ好き。 前は、あんなに晴れが好きだったのになあ、なんて。
最初の頃は、「忘れる」と自分に言い聞かせるほど想いは強くなっていったけど、今ではなんだろう……そうしていると、想いが一瞬でも、微かでも、薄まる気がする。
そして今日も、今まさにお兄ちゃんが待つ家を目的地に、頭の中で繰り返す。
忘れる忘れる忘れる忘れる忘れる――――。
傘に落ちる、雨音に掻き消されることなく鳴り響く言葉。 水溜りを見つける度にわざと大きく足を踏み入れるのは、そこに写ったあたしを壊せる気がするから。 相当きてるなあ、自分。 思わず自らを嘲笑。
家に着いて、いつも通り門を通って郵便受けをチェック。 今日はない、か。 玄関で靴を脱いで揃える。 自分の部屋に向かう前に、リビングに一旦寄るのはいつもの癖。 なぜだろう、誰もいないのはわかっているのに……。
ドアを開けて、独り言になってしまう挨拶を吐き出す。
「ただいまー……」
「おかえりー」
誰?
「どうした?」
「……なんでも、ないっ……」
あたしは、結局リビングに足を踏み入れないまま自分の部屋へ猛スピードで駆けた。
「おい! 希恵!」
部屋に入るなり、乱暴にドアを閉めその場にへたりこんだ。
「嘘、でしょ……?」
驚いた。 声も出なかった。
一瞬、あたしに笑顔を向けて「おかえり」と返す、お兄ちゃんが誰なのかわからなかった。
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