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「…っ…ぅ、っ…」
静まり返った地下牢の廊下に、切羽詰まった呻きが響く 夕飯を手にサガミの牢へと足を進めていた俺は、思わず踏み出した足を止めた
地下牢に保護しているのはサガミ一人。そして廊下に響くのは、明らかに彼が堪えた泣き声 俺は早足にサガミの牢へ向かうと、鉄棒の仕切りから中の様子を伺う
鈴村さんの言うとおり、ベッドの上には大きな毛布の塊が縮こまるように丸まっていた 気付けば、呻くような泣き声は止まり、その塊はぴくりとも動かない
「サガミ」
名を呼ぶが、返事はなかった まぁ、当然か
牢を開け、後ろ手で閉める。ベッド脇の小さな木机にお粥ととりわけ皿を乗せた盆を置き、静かにベッドの端に腰を下ろした
猫背に丸まり体を横にして眠るサガミのラインが、薄手の毛布のためくっきりと分かる …いや、"眠る"は正しくない。"眠るフリをした"サガミか
「…サガミ、寝てんの?」
不意をつき、頭まで被った毛布を引き剥がす 見ると、強く瞼を瞑り、唇を噛み締めるサガミの横顔 丸まった体を強く強ばらせているのがわかる 目の端に溜まる水滴が、泣き声の主を確実なものにしていた
下手にもほどがあるサガミの狸寝入りに、思わず小さく吹き出してしまう 頬にできた涙の乾いた痕を、そっと指先で撫でると、眉がぴくりと動いた
「…ねえ、なんで泣いてんの」
低くトーンを下げた声が、牢に響く。我ながら自分の声の豹変ぶりには驚くものがあるな
体を折り倒し、サガミの目尻に優しくキスを落とすと、そのまま唇を耳へと移動させた きゅっと噛み締めたサガミの唇の隙間から、僅かに声が漏れたのを、俺は聞き逃さない
小さく微笑を浮かべ、俺はサガミの耳朶を甘噛みする 耐えきれなくなったのか、小さく悲鳴を上げたと同時に勢いよく上半身を起き上げた そんなサガミに、してやったりとでもいうように、不敵な笑みを向ける
「…あぁ、起こしちゃった?」 「っ、ー…」
泣いた名残か、潤む大きな瞳で精一杯に睨みをきかせるサガミ その威嚇の目が、俺を欲情させるだけだということに彼は全く気付いていない
僅かに紅潮した頬といい、小刻みに震える肩といい、無自覚とは思えないほど俺を煽るその仕草 押し倒したい衝動をぐっと堪え、俺はいつも通り柔らかく微笑んだ
「…食べようか。夕飯持ってきたんだった」
木机に置いた盆を持ち、壁にぴっとりと背をつけたまま俺と距離をおくサガミの前に差し出した 相当空腹だったのだろう。蒸気を上げるお粥を凝視したまま口元を緩ませる彼 愛しさを再確認し、俺も思わず笑みを浮かべた
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