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「…泣いたのか?腫れてる」
頬に手を添え、腫れた目尻を優しく親指で撫でた すると、俺を見上げるサガミの瞳がみるみるうちに涙の膜で潤んでいく 俺は小さく目を見張り、反射的に頬に添えていた手をぱっと引っ込めた
「…わかんねー……」
と、思わず貧弱な声を漏らしてしまう サガミの前にしゃがみ込み、彼と目の位置を合わせると、途端に顔ごと真横に逸らすサガミ ―……傷つくんですが、あからさますぎて。
どう対処して良いのかわからず、潤む目を伏せ顔を俯かせるサガミに、下から覗き込むようにして近づいた
「おい、サガ――
呼びかけたサガミの名の語尾は、口から発せられることなく俺の喉を逆流した 何故なら、突然、サガミの小さな唇が俺の薄く開いた唇を塞いだからであって
つまり、キス…されたのだ 俺からではなく、サガミから
驚愕、の二文字が、今の俺の表情を表すのに打ってつけだろう 目をこれでもかというほどに大きく見開き、息を無意識のうちに止めていた
触れたままの状態で硬直していると、唇の隙間から生温い感触が俺の口内に入り込む 紛れもない、サガミの舌だ たどたどしい動きで、その舌は遠慮がちに俺の舌に絡んできた
舌の裏筋を舌先で辿るその動きも、歯列の裏に唾液を塗りつけるような動きも、全て、俺が風呂場でサガミに絡ませた舌の動きとよく似ていた 真似しているのだろう、恐らく ぎこちないその動きが愛しく思え、口元が綻んだ
瞼をぎゅっと瞑り、眉をしかめ、懸命に俺の口内を舐め回すサガミ
「…ん、…んぅ、ん…」
甘く鼻にかけた声を漏らすサガミに、抑え込んでいたものが膨れ上がる
――…期待、してしまってもいいだろう?サガミ
じっと、サガミにされるがままでいた舌を動かし、形勢逆転とでもいうように、今度は俺がサガミの舌を荒々しく捕らえた 肩を大きくびくつかせ、逃げ腰になる彼を、ゆっくりと湿り気のある床に押し倒す
抵抗などせず、静かにサガミは床に背をつけた
「…は、…ぅ、んぁ…ん」
息を継ぐ度に漏れるサガミの荒い吐息に、俺も激しく煽られ、絡ませる舌の動きが自然と激しくなっていく くちゅくちゅと、卑猥な唾液の音が、静まり返った資料室に響き、更に興奮した
ゆっくりと唇を離せば、頬を紅潮させ、口の端から唾液の筋を細く零したサガミが、苦しげな表情で肩を上下に揺らす あまりにも妖艶な目下の彼の姿に、俺は思わず目を細めた
「――…サガミ、俺のこと好き?」
いつぞやの問いかけと大変良く似た質問。似ているようでいて、全く対称的なのだが しなやかな首に指を這わせながら、俺は小首を傾げサガミを見つめる はあ、はあ、と荒い息を繰り返しながらも、彼はうっすらと開いた唇から、絞り出したような掠れた声を上げた
「…ん、…ぅ、す、…うき…」
―…やばいな、今俺気色悪い笑み浮かべてそう 緩む頬を引き締め、平静を装うものの、込み上げる歓喜の思いは止め処なく溢れ出、抑えがきかない
うん、と一つ相槌を打つと、俺はサガミの首筋に舌を滑らせ、鎖骨を強く吸い上げた
「…ぁっ…ぅ」と、サガミの微かな喘ぎが聞こえ、俺は薄く笑みを浮かべる 赤く咲いた痕は、彼の雪肌にとてもよく映えた
俺のもんだって証拠だよ、だなんて、有りがちなクサい台詞が浮かんだが、やめておいた そんな胡散臭い演出なんかやめて、今は静かに浸っていたい
サガミを手にした、優越に。
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