|
やっと、まともな人間が口にするものを食べるまでになった 机を挟み、向かいに座るサガミが手で鷲掴みにしたハンバーグを一気に口へ入れ頬張る まあ、食し方にはまだ多少のズレがあるが…
保護した直後は、馬の生肉を美味そうに頬張っていたのだ それに比べれば、まぁまぁの進歩であろう
「…落ち着いて食べなサガミ。誰も横取りなんかしないよ」
彼の口端についたデミグラスソースを、親指で拭う 突然の俺の行動に相当驚いたのだろう、サガミは体を小さく震わせ動作を止めた
「……や、…ぁや」
言葉が未発達なサガミは、喉からかすれた声を上げる 俺が小首を傾げると、突然、拭ったソースがついたままの俺の指を口に含んだ
ああ、"いや"って言いたかったのか ソースを横取りされたと思ったんだろう、卑しいやつめ
俺の指に舌先を這わせ、舐め回すサガミ 俺は息を呑み、高揚する気持ちを必死に抑えた 全く、無自覚な行動が一番困る
「…サガミ、くすぐったいよ」 「ん、…ぐたい…?」
俺の指から口を離すと、首を大きく傾げる そんなサガミの行動が、どうしようもなく愛しく思え、体が熱く高ぶった
樹林から保護されたばかりの頃、警戒心も獣並みに強かったサガミは、見目は美しいが、中身はただの猛獣だった 俺の腕に痛々しく残る内出血や噛み傷、爪痕など全て、サガミにやられたものだ
月日をかけ、サガミも俺になつき始めている 彼はきっと俺を、"優しく温厚な自らの味方"だと、心を許しているのだろう。周囲と同じように
まだ、本性を見せるには早すぎる。だろう?サガミ
俺は小さく微笑を浮かべ、頬杖をつきサガミを見つめる 彼の皿に盛られていた大量のハンバーグは、残すところあと一つとなっていた
|