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サクラビート

1: 名前:8ko☆12/08(月) 18:19:36 HOST:59-171-33-182.rev.home.ne.jp

ああ、たしかあれは 地面が桜で溢れていた季節。


「鈴浦…ってあの鈴浦ですか」

桜もだんだん散り行く頃、…たしか5月の始め。高2だったか。
クラス替えが無かったからこの時期はもうクラスメイトが全員馴染んでおり
団結、といった雰囲気であった。

さて、鈴浦というのは その雰囲気をもろともせず 輪から一人孤立したマイペースな狼で
笑いもしないが泣きもしない そんでもって表情一つ作らない。

口数も少ないし家族関係はおろか友人関係すら分からない。
もうなにひとつ分からない謎のクラスメイト。

なもんで、段段浮き始めてきたわけだ。

さあ前置きが長くなった。
俺は神谷という。おかげさまで厚くなった人望を活用し学級委員なるものをやってるわけで。

担任に、未だクラスに馴染めない彼に声を掛けろ、という命を受けたのであった。


「そうだ あの鈴浦。」
「勘弁してくださいよ…俺あいつだけはまじで苦手なんです」
「おま それが学級委員長の言葉か!クラスメイトを愛せよ!」
「あはは愛してますよー(棒読み)」


とはいいつつ 仕事を受けたらこなさずにはいられない頑張りやさんな俺は
とりあえず声を掛ける、までにこぎつけたのだ。


34: 名前:ほろナイン☆12/24(水) 22:28:38 HOST:gp-cm34-0461.lcv.ne.jp
更新あげです^^←

35: 名前:8ko☆12/25(木) 14:57:00 HOST:59-171-33-182.rev.home.ne.jp
ほろナインさま>>
わばば、あげありがとうございます^^
助かります〜*′q`


36: 名前:8ko☆12/25(木) 15:32:28 HOST:59-171-33-182.rev.home.ne.jp

「神谷、ちょっと」

次の日 声を掛けられて心底焦った。
小声で俺の肩をつついたのは鈴浦だった。

人気の少ない廊下まで出て、鈴浦は意を決する表情で俺を見た。
…が、3秒と保たれないうちに視線は足元に落ち、
その繰り返しを数回ループで行なわれたものだから、俺は
たまらず「何だ!?」と聞き返した。


鈴浦は、「あーーー…」と変な声を漏らして
ごく小さな声で俺に尋ねた。

「…その 俺、とおまえって つ…付き合っ」

惜しいところまで言って、鈴浦は固まってしまった。
そらお前。お互い両思いが判明して、ちゅーして、な?

掘り起こした好奇心を、俺は鈴浦に聞いてみることにした。


「…俺なんかでいいのか?」


たしか、前もこんなことを思った気がする。
返答…。

「うん」

不覚。俺は鈴浦に見惚れた。
ふざけんなよ…そんな笑顔見せられて。

鈴浦の笑顔というものはそれはそれは綺麗だった。
この俺が見惚れたんだ。すげえだろ?鈴浦の笑顔、誰にも見せてやりたくない。
そんな感情すら芽生え初めて来ている。


「――ありがとう」


鈴浦の人生には 明かりを灯すひとがいなかったのかもしれない。
きっと放っておいても、アキさんのことだ。
なんとかして弟を建て直したかもしれない。


それでも俺は、理由は不順だったかもしれないが、俺は
鈴浦ハルっていう一人の人間の 歩く歩幅を教えたり
順路を教えたり。

ちょっとでも鈴浦の、道を照らせれば
もう十分じゃないか。
俺はもう、よくやったよ。

誰か俺の頭撫でてやって。
って思ってたら、鈴浦が抱きしめてくれました。


37: 名前:メロウ☆12/25(木) 15:33:41 HOST:219-122-164-168.eonet.ne.jp
これ大好きですっ
BLはBLでも腹がよじれるBLでs←
鈴浦好きですわー
更新頑張って下さい


38: 名前:8ko☆12/29(月) 22:29:23 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
フッフー!久々の更新します

メロウさま>>
だだ、大好き…!ありがとうございます!
初めまして8koと申します。
ご感想頂けて本当に嬉しいですー!
これからも笑っていただけるように、もっと好きと
思って頂けるように精一杯努力したいと思います〜^^


39: 名前:ほろナイン☆12/30(火) 10:59:55 HOST:gp-cm34-0461.lcv.ne.jp
再びあげですー^^
にゃぁ〜w
ハルちゃんかわゆすだぁ(≧∀≦)!!
更新ガンバッテくださぁいッ


40: 名前:8ko☆01/01(木) 18:53:04 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
明けましておめでとうございます。今年もぜひよろしくお願いしますね。

ほろナインさま>>
ひゃー!何度も上げてくださって感謝感激の域でございます!
ハル可愛がって下さってありがたいです…!
きっと鈴浦も喜んでます腹の底では。
更新がんばりますね!いつもご感想ありがとうございます^^


41: 名前:8ko☆01/01(木) 19:28:23 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「アキ 気付いてるだろ」
相原が言ったから、アキは振り返って微笑んだ。

「神谷くんのこと?」
「そう」

保健室のベッドに横向きに寝ていたアキは、ゆっくり立ち上がって
相原の隣に座った。

「先生 俺、神谷くんとハルは、出会うべき二人だったと思うんだ」

肩に、こてっと首をもたれると、相原は後ろに手を回して
アキの頭に手を置いた。
俺キャバ嬢みたい、と呟いたら「アホか」って言われた。

「俺にとってのアキが ハルにとっての神谷だ。
お前と神谷、似てる気がする。人に明かりを照らす存在」
「…でも俺、先生に会わなかったら 先生を照らせなかったよ?
反射だからね 月なの、俺」

アキが微笑む。相原は、それはもう見惚れた。
本格的にイチャイチャが始まった頃、
保健室の扉を開くは、ハイ 俺。


ディープキスとやらをいやらしい体制でやっていた二人の目が
一気に俺へと向く。

「…ッは、その…ッ」
息を詰まらせるアキさんに、笑顔を一つ送って
保健室の扉を勢いよく閉めた。


今回は鈴浦と共に来たのだ。
相原氏と、アキさんと話したい。という鈴浦の要望。
彼が誰かと関わることを望むのは凄い進歩だと思うのさ。

でも保健室入って一歩目に実兄のあのような、あられもない姿を
見せる訳にはいかないよ。
俺ただしいよな?


42: 名前:8ko☆01/01(木) 19:47:48 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

対面した鈴浦兄弟。やっぱり似ていた。
一卵性の双子だとか そういう似方ではなく、
顔の構成というか、とっさの仕草や表情…

血の繋がりを感じさせる点で 似通った部分が多い。

「…ハル」

保健室に恐る恐る足を踏み入れた鈴浦を目にして、アキさんが驚いたように声を発した。

まあそれも先ほどのことであるが、
その時のアキさんの表情は、
先日屋上で鈴浦に、『アキさん ゆってたぞ。お前を変える為なら力になるって』
と教えた時の、あの目映い瞳に近い。


鈴浦もアキさんも、不仲を匂わせる発言が目立ったが、
心の深いところで想いあっている。
声を掛けるタイミングを失っただけなのだ。


「…兄貴 ひ、久し振り」
鈴浦が目を泳がせながら声を発した。

やべえ、俺今泣きそうになった。
小4の時飼い犬がやっと心開いてくれたときの気持ち思い出した。

「な、何がっ久し振り、だよ…っハル」

目をうるうるうるうるさせて 抱き付かんばかりのアキさん。
背の高い相原氏に羽交締めに止められたアキさんは
なんか小さい子みたいで可愛かった。

というかボロボロ泣き出した。
鈴浦が、「泣くなよ」と、アキさんに近寄って声を掛けている。
相原氏の腕を解いたアキさんが、鈴浦の首に抱き付いた。


ああ、今 鈴浦とアキさんの間の冷たい氷が溶けた。


「良いですね、兄弟」
俺が言った。

「…恋人をそっちのけにしない程度の愛ならな」
と不服そうに呟いた。

アキさん、どっちが兄だか分からないくらい子どものような表情で、
鈴浦は落ちつきと、兄がぼろぼろ泣いてる驚きと困惑で
ただただコクコク頷いていた。


俺は、うん。
鈴浦の幸せに少しでも貢献できたことを幸せに感じます。


43: 名前:ほろナイン☆01/01(木) 20:48:36 HOST:gp-cm34-0461.lcv.ne.jp
今晩わぁw←
そしてあけましておめでとうございます!!

ハルちゃん…よかったです^^!!
そしてハルちゃんにちょっと妬いてる相原氏がかなりツボですw
こうしんがんばってくださーい☆


44: 名前:30☆01/01(木) 22:39:01 HOST:ser352878012166024
あけまして
おめでとうございます

お久しぶりです
8ko様お元気でしょうか
・д・)┓
新年やっとこさ春休みの宿題課題をやり終えました

更新されてて幸せです
兄弟大好きです
´ω`)\タハー
今年も応援しますb
8ko様
大好きでs(←帰れ


45: 名前:8ko☆01/02(金) 10:44:35 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
ほろナインさま>>
おはようございます〜^^おめでとです^^
相原氏良い大人のくせにガキですな…。
いつも感想ありがとうございます…!助かってます(′`*)
更新頑張りますね!ほろナインさまもよいお年を!

30さま>>
明けましておめでとうございます〜!お久しぶりです!
私ですかっ!元気過ぎて周りに迷惑かけてますぞ!
30さまもお元気でしょうか?インフル今年新型とか
ガンダムみたいな名称になってるくらい強いらしいですぜ…!
気をつけてくださいね^^
兄弟好きですか…!嬉しいです!
ハル兄ちゃんまた号泣しちゃいますよきっと^^
うはー!私も30さま大好きですー!

お二方、ありがとうございました^^
本当に…。サクラビート…こんなに続くと思ってなかったもので
たくさんの方に言葉頂けて、8koは幸せでございます。

…なんか最終回みたいですが、まだ続きます。


46: 名前:8ko☆01/02(金) 11:06:15 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp


アキさんは、山から前触れもなく吹き出したマグマとも言えるような速度で
今まで言いたかったことや、報告したかったことをハルに話す。

鈴浦はコクコク頷きながら ぎこちなく笑ってる。

放置され組の俺は、同じく級友の相原氏と、
淹れたてのコーヒーをすする。


「…俺とアキ、出会ってまだ1ヶ月なんだぜ」

相原氏が小声で言ってきた。
まさか〜、と言いたくなったが 確かにそうだ。
今5月だから今年の春赴任してきた先生とアキさんは
前後なにかしらの関係がないのであれば1ヶ月ほどの仲なのは当たり前。

「アキの話をしてあげよう」

相原氏は、悪い笑顔で呟いた。
口元をニヒルに曲げている。
この人には、どんな冗談や嘘も通用しないだろうな。

嘘がうまい人に嘘は通用しないのさ。


「俺がこの学校の保険医になったのは、入学式があって
その次の日の離任式の日からだ

で、その式が終わったあと 保健室に向かったわけだ」


離任式の日 壇上の相原氏をみて 女子がよく騒いでいた。
きっと昼休みや授業中、女子のファンがわんさと保健室に駆け付けるであろう勢い。

それでも保健室によりつかなかった理由。

簡単だ。当時の俺は全然気が付かなかった。


「アキが居たからな。怖い目ぇしたお兄さんが」

…前にも言ってた。
自分はピリピリしていた、と言っていたし
アキさんの所在を3年に尋ねた時も、なんだか素っ気無い感じだった。
『あんな奴知らねえよ』みたいな。


「暴力事件だよ 結構起こしてた。
他校の9人相手に一人でボッコボコとか。
喧嘩が信じられないくらい強くてさ

人なんか寄りつかねえ。他の教師も放置状態で。」

全く以って想像できない。
だが、もう少し静かにして 相原氏の話に耳を傾けようか。


47: 名前:8ko☆01/02(金) 11:21:10 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「分かりやすく言えばな、あいつ。悪い奴じゃなかったんだ。

9対1の喧嘩の時も、きっかけは 喧嘩売られてる小学生の女の子がいて
そのこを庇うためだったらしい

なんていうかね。
近づくなオーラを全開にしてたのは、他校から目をつけられてる
自分に、関わりを持った奴は狙われるから
自分から突っぱねてたらしい。

カッコイイよな。ガキにしては、そんな自分儀持っちゃって。


でもさ、違うだろ。
頼りにしたかったんだよ 本当は。
でも、周りを避け過ぎて 縋るものがなくなっちまった。

自分から迷路に逃げ込んで 帰り道がわからなくなっちゃったんだよ。ガキだから。」

相原氏、なんか冷たく言ってるけど 声の調子は『仕方ない奴だな』みたいな
呆れながらも大事にしてる感じだった。

だから俺は黙って聞く。
相原氏は『話したかった』んだ。


「でも、俺が少しアキの弱い所をつついたら
すぐにボロが出てな。

ずっと溜めてたものを一気に出してた。
本当のアキは今のアキ。
柄にもなく悪い人を演じてたら、後戻りできなくなっちゃったんだ

鈴浦もそんな感じだろ?
あいつがなんで、あんな風に何も話さない人形みたいな野郎になってしまったか
経緯は俺には分からない。

でも、あいつも何か溜めこんでるものがあって、
そこを神谷につつかれて 一気に錠が解けたんだ。

案外、鍵は『神谷とのキス』みたいな
ディズニーみたいなのだったら面白いよな」


笑いながら語る語る。相原氏、けっこう口数は多いらしい。
笑えませんよ、と俺は言ったが。
おお、ちょっと待て。


「…なんで俺と鈴浦がキスしたって…知ってるんですか…?」

恐る恐る訪ねたら、
相原氏は静かに微笑んで 邪気を感じさせない瞳でこういった。


「見てたから」


48: 名前:8ko☆01/02(金) 11:40:38 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「今日はありがとう」

帰り道、俺は鈴浦にそう言われた。
さすがにまだ、まっすぐ俺を見て、という感じではなかったが
俺にはその言葉が嬉しい―――はずなんだが、

もしかしたら相原氏がそこらへんに居るんじゃないかと
なんとなく伺ってみる。

…怖い。あのひと怖い。


「俺 神谷…居なかったら。ちょっと前の兄貴みたいになってた…と思う」

ああ、さっき  相原氏に聞いた。
そんな返事をしてたと思う。

「あの時の兄貴は さすがに怖かった。でも悪い奴じゃないって知ってたから、嫌いにはならなかった
俺は 深冬(みふゆ)が…」

深冬?

「そうだ…。まだ、しっかり言ってなかった気がするから」

突然話を変えて、鈴浦は俺の手を取った。
びっくりした。
落ち着いた声の調子で言う。

肩に手を置いて、静かにキスした。
いや、俺からすればキスしてきた、だけどさ

手馴れてない、ぎこちないキスだった。
そういうところすら可愛いと思えたら、末期だろうか。


「好きです」


…そんな時だけ まっすぐ目、見るなよ な。
俺今、顔赤いかも。あー恥ずかしい。

「あ、いっ、う、」
変な口篭もり方をしてしまったよ。


手繋いで帰り道を歩いた。
もうしばらく、誰もいない道を 二人だけで歩きたい、とか
俺、結構乙女思想だな。びびるぜ。


49: 名前:8ko☆01/03(土) 10:28:17 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「おかえり廉。」
「ああ 遊佐か ただいま」

浮き足立つ、とはこういうことを言うのか?
「花が飛んでるぞ」
遊佐は言っていた。
というか、帰ってきたら親より先におかえりと言ってくる従兄弟。
家が近いからよく来る、というレベルじゃなくなってきてる。

住み込んでる。
1丁目の居酒屋で住み込みアルバイトしてる奈緒子ちゃんより住み込んでる。
もう2階に遊佐の部屋が出来あがって来てるぞ。
神谷家を遊佐の別荘にするんじゃありません。
…って遊佐も父さんの兄の子供だから神谷なんだけどさ。


「どこ行ってたの?」
「は…?えーと、友達と遊んでたけど」

飼い主が構ってくれなくなった子犬みたいな目と声で聞く。
懐かしい。こいつガキんころもこんなんばっかだったな。

「彼女か!?」
…違う、よな。うん。
「何それ…」
女じゃないんだから嘘じゃない。

「別に友達と遊んでただけだって。何て言えば信じる?何すれば安心すんの?」

俺が言ったら、年上のくせにちっちゃい子の目遣いで
「…マリオカートしよう」
「はいはい」


50: 名前:8ko☆01/06(火) 20:35:54 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「好きな子できた?」

俺の顔を覗きこんで、遊佐の一言。
俺はとりあえず目を丸くして、でも焦ると痛いとこ突かれるのは分かっているから
微笑んで「なんで?」って言った。

予想していた反応と違ったのか、遊佐は「違うかぁ」と、マリオカートのキャラをセレクトしていた。

「あ キノピオとるなよ」
「早いモン勝ち」

しぶしぶヨッシーを選んだ俺は スタート地点で、カウントダウンを待つ。


「ね。廉 勝負しよ」
遊佐が、にっこり笑顔で言ってきた。

「俺が勝ったら 何でも俺の言う事を聞く」
なんて楽しそうな表情だ。いいだろう。勿論、俺が勝った時はその権利は俺にくるんだろうな?

「うん。ま、廉が勝ったらねぇ」
ニヤリ。
遊佐の笑顔と同時に、スタートの音が鳴った。


…さて、遊佐と俺のマリオカートの戦いを事細かに説明できる
ボキャブラリーには生憎乏しく。
一言で言おう。接戦であった。
俺がスターとれば奴は雷を取り。他のコンピューターキャラに赤い亀の甲羅で弾かれ。

久々に熱くなった気がする。
普通に去年の球技大会より燃えた。


さあ、結果を述べようか。


「…ま…負けた…悔し過ぎる…」
俺、敗北。
遊佐は見た事ないくらい笑顔を輝かせ高らかに笑っている。

途中まで1位をキープしていた俺を、
まるで「実は泳がせていたんだぜ」ばりにラストラップで最下位から抜くわ抜くわで
ゴール直前で俺に赤い甲羅ぶつけやがった。

ナメていた。こいつを完全に。


51: 名前:8ko☆01/06(火) 20:46:19 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「…んで、遊佐」
「様」
「…遊佐様」

ドSのオーラを紅白の小林幸子の装飾の如く広げる。
駄目だこいつ。はやくなんとかしないと。

「俺の言う事なぁ〜んでも聞いちゃってくれるんですよねぇ〜?
ど〜しよっかなぁ〜」
微笑みながら顎に手を当て、金髪をしとやかに揺らしながらくっるくっる回ってやがる。

そんなに楽しいか。


「じゃあ…」

何か思い付いたような、目の中をキラッ☆(@ランカ)と輝かせ
体育座りの俺の前にしゃがんで小首を傾げる。


「俺と結婚してよ」


思い掛けない言葉過ぎて反応に困った。
…ギャグのつもりか。つまらんことを言いやがって。

「…冗談ならもっと面白いことを言え」
「ううん。冗談じゃないよ」

…遊佐?

「俺ね、小さい頃から ずっと、ずーっと。廉のことが好きだったんだよ」


俺はいつから男にモテるようになってしまったんだ。


52: 名前:8ko☆01/06(火) 21:37:00 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
そうだ。小さい頃から遊佐は 嘘が果てしなく下手だった。
目は泳ぐし挙動は不審。
思ってもないこと言えないタイプ。
だから、したくないこともしないタイプ。

相原氏の甥っこ、紫咲くんを助けた時も 「助けなきゃいけない」と感じたから
助けたんだろう。そういう奴だ。

―――今も、言いたいから言ってるの?

「馬鹿言うな、藪から棒に。…俺、母さん手伝ってくる」

立ちあがった瞬間、手掴まれた。訴えるような真剣な眼を向ける。
「待て。落ち着け遊佐」
「落ち着いてるよ」

ニコリともしなくなってきた遊佐に多少不安を覚える。

「願いごと聞くんだろ?」
「それとこれとは話が違――」
腕を振り払おうとした瞬間、壁に押し当てられた。
腕も抑えつけられて、遊佐の思ったより強い力に驚愕。


「待っ、離せっ」
空いてる方の手で抵抗しても、そっちも抑えられて両手は封じられた。
情けない…。そういえば遊佐、喧嘩強いんだっけね。


「…今まで我慢してたけど。…もう無理だよ、廉。
お前の声とか 仕草とか そういうの一つ一つで…辛くなる

分かってるよ?好きな人いんだろ?

分からないわけないじゃん 世界で一番好きなんだから
でも 嫌われても 俺は」


泣いていた。と思う。



53: 名前:ほろナイン☆01/06(火) 21:44:38 HOST:gp-cm34-0461.lcv.ne.jp
遊砂様ぁ!?
け…結婚…。
いったいどーなるのだぁッ!!
続き気になります…

毎回毎回、ホント好きですこのお話…
がんばってくださぁい!!!


54: 名前:8ko☆01/08(木) 21:38:32 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
ほろナインさま>>
こんばんは^^いつもお世話になっております!
結婚…。突拍子もないこと言い出す奴ですね。
走りながら書くタイプなので設定おおまか過ぎて
私も明日がみえませぬ…(薄目)

こちらこそ…!ほろナインさまには感想頂く度に
ものすごいエネルギーと感謝をもらっていますぞ…!
頑張ります!


55: 名前:8ko☆01/08(木) 22:06:45 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

力を無くしたようにするする腕は解けて、脱力したように膝突いてへたりこんだ遊佐。
肩が微かに震えてんのが分かる。


「…俺もう この家には来ない。お前の顔を見たら 何するかわかんなくて」

ああ完全にネガティブモード。
何で俺の周りには、立場が弱くなると後ろ向きな発言をだらだら繰りかえす奴が
多いんだろうか…?

言っておくけどな。
俺だって言いたいことがあるぞ。


「遊佐。こっち向け。話を聞け」
「やだ」
「…お前は…ッ」
「だって…」

泣いてる、とか 泣くまで思いつめるとか、さ。
待てよ。待てよ。
何故遊佐はそう、完全に壊れかけのレイディオになるまで溜めるのだ。

「『やだ』も『だって』も聞きません!何でお前が
俺に会うのをやめたり家に来なくなったりしなくちゃいけないんだ?

俺は、遊佐が男を好きだとか お、俺…を好きだとか
そんなんで変に思ったり嫌いになったりしないし
お前が頭抱えて悩んでるのを見てる方が気持ち悪いわ!
柄にもない!

…その、バレてるみたいだけど、確かに俺今、好きな奴いるんだ。
血は抗えないっていうかな…相手は…うん。男なんだけどさ…」


遊佐は、まだ俺の顔を見ることもせず「知ってるよ」って呟いた。
…なんでだよ。


56: 名前:8ko☆01/09(金) 20:22:37 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「…廉」
今度はなんだ。多少構えつつ返事する。
何を言い出すんだ!俺は即座のリアクションが苦手なので、
何を聞く前に言っておいた。

「…お前の好きだってやつに電話かけろ」

俺のポケットに入っていた携帯を引き抜いて、俺に差し出す。
何を言い出すんだ。やっぱりそう思ったので言っておく。

まあ、約束だったし…少し抵抗あるからあれだが
全てはマリオカートに負けた自分に非があると思い、携帯を受けとる。


アドレス帳「す」のページから鈴浦アキ、鈴浦ハルと並ぶ二つ目を選び、発信。
呼び出しのメロディが2,3秒鳴ったあと
ハルの声が携帯越しに聞こえてくる。

なんか知らんがすごい緊張する。


「あっ」なんか間の抜けた声が出た。
「…神谷?」鈴浦も鈴浦で少し間の抜けた声だったが。

「どうしたの?」
のんびりとした口調で尋ねてくる。
「…あー、えっと、今」
理由を言おうとした瞬間、目にも止まらぬ早さで携帯を取り
遊佐は自分の耳にそれを当てた。


「はじめましてこんばんは〜僕、廉の従兄弟の遊佐っていいます
いつもお世話になってるみたいで〜」

なんて社交辞令声だ。恐ろしい。
勿論、普段から大きな声ではない鈴浦の返事は俺の耳に届く事はなく。

まああいつのことだから、軽く混乱しながら「ええ」とか「はあ」とかの繰り返しだろう。


「突然ですけど、俺、廉のこと好きなんですよ
恋愛的な意味合いで」


57: 名前:8ko☆01/09(金) 20:42:32 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp


「何言ってんだ遊佐ぁッ」
慌てると大声が出る。
携帯を奪い返そうと奮闘する俺を首固めで捕らえた遊佐は
静かにしろと微笑んだ。遊佐、あんたそんな人だったっけ?


「鈴浦くん…だったよね。俺にさ 廉ちょうだい?」

もがいた、とはこの様子のことだろう。
誰か遊佐を黙らせろ。頼むから。

鈴浦の返事は聞こえない。何か喋っているのは分かるのだが
どんな返事なのか、分からない。

しばらく黙りっきりの遊佐。
途端、大きな溜息を吐いた。


「うん。ごめんね、鈴浦君。冗談。ゆるしてね。
廉に好きな子が出来たっつーから どんな奴か探ってやろうと思って。

あはは、勿論。廉が好きっていうのも嘘だよ〜

うん。さっきの聞いて 安心した。君なら…。
廉が好きになるのも おかしくない…かな」


不思議な気分だった。
もがくのもいつのまにか忘れていた。

遊佐の綺麗な微笑みを見ていたら、俺のこと好きだとか言い出したのも全部嘘だったとか
そんなん全部なんとも思えなくなってきた。


遊佐は、鈴浦に「ありがとう」を繰り返していた。
静かな空気が流れていた気がする。



58: 名前:8ko☆01/09(金) 21:12:35 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
携帯を手のなかで折りたたみ、俺に手渡した。
遊佐は、「ひっかかったな」みたいな悪い顔をしていた。

「鈴浦はなんて返事したの?」なんて、遊佐に聞けるわけがない。
気になったが、この疑問にはサランラップでもして封じておこう。


「廉の好きな人が男だってのには気付いてたからな。
どんな奴だろうと探ってみた。悪いね。

まあマリオカートに負けた自分を呪ってくれ」

にへヘ、と歯を見せてはにかむ。
いつもの遊佐に戻ってくれた気がした。なんだか安心だ。

…でも、さっきの俺のクサい言葉集を無料で聞かれたと思うとさすがに腹立だしいな。
泣いてたのも演技だってか?アカデミー賞も吃驚だよ。

「ふー、すっきりした。じゃあまた明日も来るよ」
来んな。…ってか、晩ご飯食べてかないのか?
「あー…今日はいいや 母さんまだかもしれないけど、なんかあるもん食うから」

そんなこんなで嵐は去った。
とにかく、俺は鈴浦が何て言ったのかが気になって仕方ない。



ふう、一仕事終えた。
廉の好きな人を探るなんて、柄にもないことしちゃったよ

あの…鈴浦君だっけか。
あのこは良い子だ。優しいだろうし、きっと廉を幸せにする。

『鈴浦くん…だったよね。俺にさ 廉ちょうだい?』

俺が言ったら、鈴浦くんはこう言った。

「困ります」

一言過ぎて笑いそうになった。
しかもめっちゃ即答。迷うことなく。

俺は分かった。彼には廉が必要なんだ。居なくなると『困ります』なんだって。

彼には、廉への想いを綺麗なことばで語る必要なんてなかった。
すごいな、って思った。


…さて。
すっかり暗くなった夜空を数えるほどの星が彩る。
上を向いたら涙が出た。

「ふー…廉が好きってのは嘘、なんて…すげえ嘘ついちゃったな」

後悔に後悔を重ねた。

「廉のこと好きだとか そんなん嘘で言うかよ…。
思わないこと言わないよ 気付けバーカ」

何もないところに呟いた。


59: 名前:8ko☆01/15(木) 18:35:26 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

さて。
いろんな話がとりあえずは一段落ついたであろう今日この頃。
そろそろ太陽が顔を覗かせる日も減ってきた。
梅雨突入。

桜なんかもう排水溝の何処であり 桜の木もツヤの無い青葉で茂っていた。

梅雨といえば雨が降る。
もう降るわ降るわ。
太陽も恋しくなってくるし、この大雨で気分が良いわけがない。
かといって雨のせいで機嫌を損ねる程子どもではないが。


大幅な時間の推進をはかってみたはいいものの、
さてこの1ヶ月何があったか?と聞かれると…

なにも無かった。と言える。
そりゃもう何もなさ過ぎて、この口に出せないような謎のモヤモヤを
ギターかなにかに載せて一曲公演したいくらいの勢いだが
…まあギターを買うところから始まってしまうのでやめておく。


鈴浦とは、多分ちょっとずつ距離を縮めてるのかもしれないが、そうでないかもしれない。
一緒に帰るとかは友人同士で普通に起こり得ることだし
休日遊ぶ、という友人同士がすべきことすらないのはどうしてだ?

というか、世間一般的(?)に言う、
「攻め」と「受け」というものが俺たちの間にあるとして、
どっちなんだ?

なぜ俺はこんなこと考えてるんだ?
「へんなかおー」
真山である。どついておいたから大丈夫。


「…なあ真山 てめえにこんなこと相談すんのも癪だが」
「じゃあすんなよ」
「じゃあいいや」
「嘘ですなんでも言ってダーリン♪」

どついておいたから大丈夫。


60: 名前:8ko☆01/15(木) 18:48:55 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「好きな人できたの?!真っ先に言えよ水臭いなー!」

真山の雄たけびがサイゼリヤに響く。
夕方の店内はそれほど混んでなかったので、まあ幸い。
同じ学校の奴がいなかっただけ良いとしよう。

女じゃないけどね、とは言えず こくこく頷きながらカルピスをすする。

「お前もつくづくチキンだよなー。雰囲気なんて気にせずに一回押し倒してみろよ」

真山の純男子的発言を軽く流しながら、指先でメニューを閉じたりめくったりする。
押し倒すって言ったってサーお前。
俺より背あるんだぜ。どうしようもねえし、力だって あの細い腕のどこからでるのか
俺より強かった覚えがある。


「ところで。好きな人とは付き合ってんの?」
「え?ああ まあ」

彼氏、とは言えず かといって彼女、という言い方をするわけにもいかなかったし。
好きな人、という表現のどこにも嘘はないよな。

「お前の好きな人、当てるし」
変なゲームを始めた能天気真山。ほう、と(どうせあたる訳無いし)体勢を変え、
挑んできた真山に返事してやる。


「うーん そうだな〜。ダーリンの好きなひとは〜♪


分かったー!鈴浦!」

カルピス吹いた。ギャグ漫画のタイミングで。


61: 名前:8ko☆01/17(土) 10:39:11 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「何をお言いでいらっしゃる」

焦ってへんな言い回しになった。あー何真山てめえ

「あっはっはー!ビンゴ?」
真山はニーヨニヨしながらコップの中の氷ガリガリ食ってる。
どうなってんだ。
待てよ真山 何真顔で言ってるんだ。


「馬鹿じゃね なんで鈴浦なんだよ。仮に男だとしてももっとイケメン好きになるわ」
「きもー!つーか鈴浦、ふつうにイケメンじゃん。存在感無いだけで」

だ、駄目だ このままじゃ俺は絶対墓穴掘る。


「…で 鈴浦は置いといて」俺が話変える。
「置くのかよ。俺もう当てたろ」ストロー噛みながら悪気の無い笑顔。
いや、案外悪気あったりしてな。怖。


「…その自信はどこから来るんだ」
「何年付き合ってると思ってんだー。顔に書いてある」
「はあ!?顔に鈴浦が好きですって書いてあんのかよ!
あんま的外れなこと言ってると樹海に吊るすぞ!」

真山は静かに微笑んだ。(@ハンターハンター)


「ほら、また。動揺の仕方がまずいとこ突かれたって感じじゃん。
いつものお前なら流すだろ、普通」


小学校2年からの仲ってやつか?この腐れ縁。


「俺に隠し事なんてな。100億万光年早いな。早いよ。」

100億万光年ってなんだよ、とか
そういうベタなツッコミはまたの機会にしよう。

普段馬鹿なことばっかりしてて、能天気で頭も悪い。

でも友達の変化には人1倍に敏感ってか。
まったく教科書にでてくるような『親友』のあるべき姿だよ。


この時ばかりは、真山より自分の方が大人で、兄のようだとか思っていた俺のこころは否定された。

俺の話を聞く鈴浦の表情は、まごうことなく 大人のようだった。


62: 名前:8ko☆01/17(土) 18:50:23 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

「おはよう」

振り返ったら、鈴浦がいた。

朝練で先に登校していた真山とわずか遅れて学校入りした俺は
コンバースの黒い靴を上履きに履き替え
下駄箱に靴をしまっているところだった。

早い朝が好きなもので、部活とか入ってなくても早くにきてしまうことがある。

普段は、なかなか起きない寝坊マン真山をお越しがてら登校するので
決して早くはないが、今日は足手まといが居ないぶん、早かったというだけのこと。


下駄箱に人気は無く、朝の白い太陽が窓からさしこむ。
その光を顔に浴びる鈴浦は なんだか美しかった。

息を呑んで「おはよう」とやっと返事が言えた。


…なんだ、俺。初恋の小学生か。
好きな子を前にした小学1年生か。


「最近、アキさんと、どう」
「うん 毎日はなすよ」
「そっか」

やべえ、話すこと無い。
違う、そういうんじゃなくて。

言葉に詰まる。緊張する。何を言えば言葉が続くか?
何を言えば 鈴浦ともうちょっと話してられるか?

俺たち付き合ってるん…だよな
断言できないのが歯痒い。確かに鈴浦にはちゅーも好きですも貰ってるが。

俺は何をあげれるんだろう。

ああ 俺ってば詩人。


63: 名前:8ko☆01/19(月) 22:09:49 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

さて、教室に着いた俺たち。
鈴浦は自分の机に座り、俺は鈴浦付近の椅子を拝借した。

特に何を話すわけもなく、ボーっと校庭で白球を追いかける真山を発見し
目で追っていた。あ、転んだ。そういう感じで。


そういえば、遊佐が変なこと言い出して鈴浦に電話したあの一件から
もうかなり経ったな。

…今日の晩飯何かな。

あ、また転んだ。
「神谷」

鈴浦が呼んだので、振りかえる。「ん?」って具合に。
そしたら唇を重ねてきた。
びっくりして身動き取れなかった。なんだ突然。

一回もがいたが、びくともしない。
右手は後頭部に回され、左手は肩に。

「っは…ッな、」
くっそ言葉にならない。出来ない。
いつの間に舌を入れるなどというハイレベルな技術を覚えやがった。

ならな、こっちも仕返ししてやるよ。

「…ッん、鈴浦…ッなめ、んなよ…俺を…」
空いている右手で、鈴浦のYシャツをたくし上げて腹をまさぐった。
するりと背中に右手を滑りこませ舌を鎖骨あたりまで舐めおろしてやった。

「うわっ…!か、かみや なにす」
「いつもやられてばっかで堪るかッ!俺だって、な」

鈴浦に、いろいろあげれるんだ

「ちゅーも好きですも、貰ってばっかで、返せないから…っ
俺だって世界で一番

鈴浦がすきだ」


64: 名前:8ko☆01/19(月) 22:19:58 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

俺的には、精一杯の思いを真剣な目で伝えたつもりだったんだが。

「…っふ、あはははは」

笑い始めた鈴浦に、多少ポカンとしてから 状況を飲みこんだ俺は、
「何で笑う?!真面目に言ってんだー!」
「っははは分かってる、…ふ、真面目に言ってるから面白い」
「ひでぇ…!」
「違う違う からかってんじゃなくて」

明るい声の調子で、笑う鈴浦。
とうとう机の上に座っちゃってる。

鈴浦は、やっと笑いが落ち着いたのか、俺の頭を右手で撫でて
にこやかに微笑む。
かっこいい。ってつくづく思った。

「そんなこと考えてたんだ?返せないとか、貰ってるとか」

「…考えるよ」
「かわいいね」

「…〜〜ッ!お前はまたッッ」

よく喋るようになったな鈴浦。
感情表現豊かになった気がする。鈴浦の変化に、俺が貢献できたなら嬉しいよ。

「俺はもう、貰ってるよ 神谷の笑顔を、一番近くで分けてもらう特権を。」


真面目な顔でこんなこと言ってくるお前の方が可笑しいわ。


「ば、
…ばかじゃねーの」

なんか今、鈴浦の顔みたら

嬉し過ぎて 涙でそうだ。


65: 名前:8ko☆01/19(月) 22:38:41 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「仲良いねあの二人もよ」
朝早く、人のいない廊下でコソコソやってる二人。


「見てせんせー。またキスしてるよあの二人」
「ほーう、俺がキスの仕方を口で教えてやったから、その成果がでたかね」

教室を抜き足差し足忍び足、てなかんじで覗き込むは、
相原とアキである。

相原の思わぬ発言に、アキは驚いた表情で彼を見る。
飄々と、且つさらりとそんなことを言う奴が信じられない。

というか、
「は!?口!?」
「なわけねーだろ。言葉で教えてやっただけだ。…こう、艶かしいリアルな表現で」

ニヤニヤと前髪を掻きあげながら言う相原。
「言葉で教えてやっただけだ」という言葉を聞くなり、
アキはなんともいえない安心感。

「っ、つーか俺の弟に変なことばっか教えないでよーほんとー。
…まあ、神谷くんとうまく行ってくれるのは嬉しいけどさ」


なんとかごまかして、さ、行こうかって感じで歩みだす。
その腕を、相原は掴んだ。

手から悟ったか、アキは「…ちょっと 先生?」と呆れ口調。


「今、妬いた?」
にっこり。悪い顔。
「妬かないよ」
「最初『口で』って言った時。焦ったろ?」

ほんと鋭くていやだな。

「…。じゃあ先生さ 俺が神谷くんとキスしてたら妬いちゃう?」
「当たり前だろ」

即答にびびる。口元だけ笑ってるけど、目は真剣だから、多分本気だろう。
そういう人だ。

「そっか。じゃあ俺もだよ変態」
「じゃあ、じゃねえだろ?クソガキ」

それで、背伸びしてこの人のキスうばってやるんだ。
ガキだなんて言わせないよ。


66: 名前:30☆01/20(火) 18:15:08 HOST:ser352878012166024
きゃふー

お久しぶりです〜
携帯ぶっこわれてました
´・ω・)
主さま元気ですか!?
とうとう
30の隣の席のかたは
インフルなりました
´д`)コワィョー
主さまどうぞ
御自愛ください`ω´)


上げです


67: 名前:8ko☆01/23(金) 22:39:07 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
30さま>>
きゃふー!
お久しぶりです〜!携帯が…!ご無事でしょうか!
8koは貧血起こしてぶったおれるほど元気です。
インフルエンザ怖いですよね〜。
お隣の方が!お大事にですね…。
30さまもどうぞ風邪にはお気を付けください〜^^

上がらせて頂きますー!


68: 名前:8ko☆01/24(土) 09:41:24 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
昨日の夜続き書いてたのに、兄貴に話し掛けられて目を離したすきに
何が起こったか全て消えた。夢にまで出てきた。
夢だけど夢じゃなかった。


69: 名前:8ko☆01/24(土) 09:53:31 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

文化祭、の季節であった。

ここらの高校は、大体6月〜7月のいずれで文化祭を行なう。
大半の高校は梅雨から初夏にかけて、もしくは秋の季節に行なわれるだろうが
俺の高校は、まさしく前者だったのだ。

生徒会の連中が毎日毎日忙しなく掛けまわる中、
クラスの出し物を決める際借り出されるのはやはり学級委員であり

何を血迷ったか学級委員長なるものに当選していた俺…という
下りは冒頭で話したとおりだ。

俺のクラスも今まさに、学級ごとの出し物について
穏かに上昇する議論を繰り広げていた。


お化け屋敷、お好み焼き屋、クレープ屋、喫茶店。
この4つに絞られるところまでいったが、
この先が進まない。

きれいにクラスを4分割した状態に分かれてしまったのだ。

「お化け屋敷は隣のクラスもやるって言ってたよー」
「でも教室変わるから平気じゃん」
「クレープ屋は多いからなるべく控えろだって」

思わず頷きたくなるクラスメイトの意見たちに
聖徳太子に負けず劣らず耳を傾ける。

様々な意見がでたところで、もう一度多数決をとってみる。

女子の意見に有力なものがあり、喫茶店が上昇してきた。
…まあこんな実況俺がしたって意味がない。
結論から言わせてもらうと、喫茶店に決まったのだ。

鍵は、真山の一つの意見。


「ただの喫茶店にしてもカブるだけじゃんー。
でさ、教室の隅になんか置いて、縁結びのジンクスみたいの
勝手に作ってさー。カップルのたまり場みたいにしようぜー」


真山の意外な意見が女子にウケて、このまま可決にもっていかれたのだ。


70: 名前:8ko☆01/24(土) 10:08:22 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

そして今、その「ジンクス」や「縁結び」などについて
詳しい話し合いが行なわれていた。

あまりにも挙手からの意見が出ないから、
副委員長の女子、若井さんが適当に差して行く。

その矛先が、鈴浦に向いた。

「鈴浦ー なんか意見ない?」

さばさば系若井さん。物怖じせずにっこり。
教室は微妙に静まりかえった。心中は同じ。「鈴浦って言葉喋れるの?」

頬杖ついて窓の外を見ていた鈴浦は、
顎を手の平から浮かせて こちらに顔を向けて 若井さんを見る。

生唾を飲み込む雰囲気というか。
何か言いたげに口を俄か開いた鈴浦が、小さいが通る声で
一言。


「…桜色の、紙に 2人で誓いみたいの書いて 木に提げる
いっぱいになったら 桜の木みたいになる」


言うだけのことを言うと、また目線を窓の外に移して、
飽きもせず空を見ていた。


「…よくない?素敵じゃない?鈴浦ーありがとー!」
若井さんは目をきらきらさせながら、俺と鈴浦の間で視線を行き来させる。

「委員長、今の意見繰り返してよ!」
「あ…ああ えっと、今の鈴浦の意見に賛成するひと」

俺、動揺。
驚いたよ…。俺と話すのさえいっぱいいっぱいに見えた鈴浦が
クラスメイトの前であのような長文を…。

それ以上に驚くクラスメイトたちは、
それでも沢山の人が鈴浦の意見に手を挙げる。


まさか鈴浦の意見で話し合いに終止符が打たれるとは。


71: 名前:8ko☆01/24(土) 10:18:41 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

話し合いの際の、鈴浦の発言は どうやら男子には好印象だったらしい。


「神谷が鈴浦の性格直したんだろー?!すげえなお前」
わざわざ言いに来るようなことでもないことをわざわざ報告してくる男子が増えた。
それから、鈴浦の周りに人が増えた気がする。

男女問わず。
鈴浦の正体を暴こうの会が発足されたり。

まあ好発進といえよう。
今までクラスの中で浮きすぎて見えないほどに存在感なかったからな。
クラスメイトに、どんな形であれ同じ立場から少なからず愛着を持たれていることに感謝すべきだ。


「乙女キラー神谷よ。ライバル登場じゃないかい?」
真山がぬらりと現れた。誰が乙女キラーだと?
人聞きの悪いことを言いやがる。

「だってこの学年でモテる人って神谷くらいじゃんかー。
そりゃよー顔も良くて頭も良くて運動神経も良くて!
男子の敵ー!そんなに女が好きかー!そんなに鈴浦が好きかー!」

「最後が一番意味わかんねえよ!しつこいな!」
「認めろー!このガチホモー!」
「うっぜえ!」


72: 名前:8ko☆01/24(土) 10:31:19 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

さて。文化祭も近づくある日のことだ。

放課後残って作業をしていた。
一般生徒は下校済み。残るは学級委員と一部のお手伝い生徒、あと生徒会本部の連中。

自分のクラスで作業をしていた俺に、お手伝い生徒と思われる女の子が近寄ってきた。

小柄で、俺より頭一つ分ほど小さい、控えめな態度が可愛らしいといえる同学年。
廊下で何度か擦れ違えた覚えのある子だ。

ただ、名前は出てこない。
多分…楠田…とか楠木…とか
「楠川です」
そりゃ失敬。

で、俺に何のご用でしょうか?
にへらっと適当な笑顔を作って、真正面に向いた。

「あ、すいませんね みすぼらしい格好で。」
上Yシャツネクタイに下ジャージだったから。
俺の前置きに、いえいえ、と首を横に振って「かまいません」と敬語。


「あの、私 ずっと前から神谷くんのこと好きでした!」


小さい頃から 「○○は神谷のことが好きなんだって」
とか、噂みたいなものを聞いたり
バレンタインデーでチョコを2桁単位で頂いたり

そういうことは、稀にあった。…稀に。


「…それは……。告白?」
「はい…!彼女とか…いますよね…。」
「いや いないけど そのっ」

俺には、

「つ、付き合ってください!」

大事なひとがいるんです。


73: 名前:8ko☆01/24(土) 10:46:22 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
【鈴浦ハル】

文化祭の準備で生徒の中でも役割を得ている人が夜遅くまで残る時期。
こういう仕事逃れにはプロ的な才能を自らのなかで見出した俺は
やはり今年も仕事は一切もらってこない。

無事帰宅できるという寸法。

神谷はこういう時、仕事頼まれたらもらっちゃうんだろうな。

家に帰ると、アキの出迎えが待っていた。
「…あれ?ハル、文化祭の手伝いとかないの?」
「逃げてきた」
「馬鹿ー!神谷くん人手不足で困ってんじゃないのー?」
「嘘。今日残ってる人は生徒会関連の仕事の人 ステージの組みたてとか、
倉庫の荷物だしとか」

ああ、そうなの?という表情で「そうだハルっ!いいお土産ー!」
とにこにこ俺の手を引く。
リビングに叩き出された俺の目の前に 懐かしい人が座っていた。

「え アレ…?なんで?」
「久し振り、ハル」

軽く手をあげて、にこやかに微笑む。
病弱で、カナダの空気で体調を癒していた、鈴浦家が長男。

「深冬…なのか、本当に」
「俺以外に誰がいるんだ。深冬お兄さんですよー」

鈴浦 深冬(みふゆ)
推参。


74: 名前:8ko☆01/24(土) 11:04:08 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
視点が変わらないと話が進まないことに気付いた。
何故私は神谷の野郎を視点にしてしまったのだろうか…。
――――


「ほう 雰囲気が変わったな、ハル。良い人でも出来たか」
俺とアキは苦笑い。
2人とも思い当たる節がありすぎて、うまい笑顔が作れない。
右の口角だけが痙攣してる気がするよ。


「もう少しで2人の高校が文化祭だろ?アキは卒業になるし、来年来たって二人揃って見れないからな

最近体調も良いし 医者が了解してくれたからさー」

「だ と し て も…!連絡くらいよこせばいいだろ?!」
「だってさ、突然いる方がドッキリ感あるじゃん」
「あー、確かにこう、ギックリするよねー!」

反論する俺に深冬とアキの天然コンボ。
この2人には、もうすでに日本語は通じない。

「さて じゃあ晩御飯にしようかー!今ナツが準備してくれてるからー」
「ナツも帰ってきてんの?!聞いてないし!」
「あははー、聞いてよナツさー就職試験落ちてきてんのー!
確か生命保険会社に『ここで落ちたらお世話になります』とか
言って落とされたんだってー」

「余計なこと言うなアキーッ!!」

遠くから聞こえてくる懐かしい声に、驚愕と呆れを含めて溜息。
突然の兄弟勢ぞろいに 驚き桃の木。

そんな折、嫌な事実が発掘された。


「…携帯…学校に置いてきた…」


75: 名前:8ko☆01/24(土) 11:14:28 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
今更ですが突然キャラがいっぱい増えて申し訳ないです。
あまり小説的じゃないのでしたくないですが、
キャラの説明を軽くさせて頂きます。

長男から、深冬(26)、夏(大4)、アキ(高3)、ハル(高2)の4人兄弟になってます。
深冬は一回、存在を匂わせたんですが ナツは出そう出そうで出ずじまいでした。

しかも就活中とか5分前にとってつけた設定で…。ごにょごにょ…。
しかもアキの本名が秋毅とか。…は?な感じですいません…!


ちなみに、ナツが就職試験の面接で言った一言は、私が崇拝する
某女芸人さんが
実際に言った言葉から頂きました。
元ネタってことで一つ。


もう少しで物語も終盤というやつですが、
これから先ももう少しだけお付き合い頂けたら嬉しく思います・・・!


76: 名前:はる☆01/24(土) 11:33:10 HOST:softbank219208039002.bbtec.net

どーも、はるです☆

もしかして、鈴浦受けとかありますか?
・・・なんでもないですv

とてもおもしろいです!あげwww


77: 名前:8ko☆01/25(日) 17:21:37 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
はるさま>>
こんばんは〜!コメントありがとうございます!
鈴浦受け…!なんだか面白い響きです…!
調子に乗って今度神谷に攻めさせてみようかな〜とか考え中です〜♪
面白…!ああありがとうございます〜頑張ります!


78: 名前:8ko☆01/25(日) 17:40:04 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
「はぁ?!今から学校戻る?もう7時過ぎてるぞ 学校あいて…」
ナツの元気過ぎる問いを軽く無視しながら靴をまた履く。
「オイ無視すんなぁー!」と喚く。半べそ。

「自転車で10分もかかんねえ」
癖で、ポケットに携帯が入ってるかを確認してしまう。
んで、「あ、そうだ 無いんだった」と思いなおす。

つま先で玄関の地面を軽く蹴って靴を履き
梅雨特有の、じっとした夜の道 自転車で走り出した。

「気を付けてネ〜」というアキの抜けた挨拶を背に受けながら。


カッシャカッシャ。静かな夜。涼しくない夜。
そろそろ日が延びてくるんじゃないかとか思いながら走る。

とおり過ぎた家から家族団欒の声が聞こえる。
切ない。
でも、今日は家に帰ったら、兄弟が全員揃ってる。
なんだか嬉しい。

きっと、神谷に会ってなかったら、アキと仲直りできないままで
神谷に会わないまま今日を迎えていても
嬉しくはなかっただろう。

深冬が病気だとかで外国…。カナダに行った時、
一番反対してたのはアキだったなあ。俺も嫌だったけど。

金銭面だけじゃない。離れるのが嫌だったんだよ。

それで荒れてる時に、あの保険医に出会って治まったんだろうが。
皮肉というか。なんというか。


79: 名前:8ko☆01/25(日) 17:56:07 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
廊下の明かりは付いていた。
まだ作業に残る生徒がちらほら見える。

生徒会として壇上とかに立っていたな、と記憶に残る女子生徒が、
今まさに校内に入ってきた俺に気付いて、大声。

「8時には閉めるから気をつけてー」
「…あーっす」
適当に返事とも無い返事をかえし、恐らく先輩生徒に会釈した。

小走りで教室に向かう。目的地にも明かりが灯っていた。
誰かいるのか、と少し警戒。

相手だって 俺が突然入ってきたら――。
ああ、でも 今日、昼間。少し仲良くなったから 大丈夫かもしれない。


教室の扉に手を掛けた瞬間だ。
「ずっと前から神谷くんのことが好きでした!」
俺もだよ。

じゃねえ、自分。状況をよく見ろ。

息を殺して、教室内の人間に見えない様、影に引っ込む。
扉の窓ガラスから見えるは、神谷、と、女子生徒。

…俺はなんつー間の悪い男だ。
いや そうじゃなく。
俺の好きな人が 知らない女に告白されて硬直している。

焦った方がいいんじゃないのか?

俺は 、ほら。男だし。
神谷と俺は 付き合ってるけど。男だし。
神谷がどんな返事しても。

「はい…!彼女とか…いますよね…。」

女じゃないけど。


「いや いないけど そのっ」



あとはよく、覚えてない。


80: 名前:8ko☆01/25(日) 18:05:39 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

『彼女は』いないよ、そりゃ。
俺、男だから。

なんでこんな 悲しい
なんでこんな 風船に穴が開いて、空気が一気に放たれるような

なんでこんな。

――思わず立ちくらみがして、つい、扉に手をついたら
神谷が驚いた声を出して、ここまで寄ってきた。

扉の外でしゃがんでいた俺を見て
心底驚いた表情で、言葉を詰まらせていた。

「…っ 鈴浦」
「あの 俺、携帯」

教室に飛び込んで 自分の机から携帯を取り出して
そのまま走り去った。
神谷はなんか大声で言ってた気がするけど

走ってたから聞こえない。


81: 名前:8ko☆01/27(火) 20:31:26 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp

頭からこびりついて離れない

【神谷 廉】

携帯を取ってパタパタ走って行った鈴浦の背中
何度か大声で「待て」と言ったけど
聞こえてないのか聞いてないのか 彼は足を止めずに
廊下の向こうに消えて行った。

俺は「彼女は居ないけど」大事な人がいる


鈴浦には 完全なる否定にでも聞こえたのだろう
俺だって、多分鈴浦の立場だったら 頭を抱えているところだったと思う

そして俺は 何故鈴浦を追いかけない。

勇気がないのか、鈴浦に何を言い出されるのが怖いのか


「あの、私っ」
「…あ 楠川さん…」
気まずそうに黙っていた彼女も、「何か悪い事をしたのかも」という
悲しげな表情で俺を見た。

「…今の、鈴浦くん…?でしたよね あの私、何か…」
「いや 君のせいじゃないし!むしろ、俺が…」

鈴浦を傷つけた?

「――ごめんね、楠川さん。俺、彼女は居ないけど、好きな奴がいるんだ
バタバタしちゃった末がこれで、本当に悪いけど」
「い、いえ…!私こそ じゃ、じゃあ文化祭頑張りましょうね!」

無理ににこっと笑い手を軽くあげて去って行った。
一人残された、教室。
楠川さんに、鈴浦に、俺。

俺は同時に3人傷つけた。


もう8時になる。


82: 名前:8ko☆01/31(土) 12:20:21 HOST:124-144-116-18.rev.home.ne.jp
これは本当にBLなのだろうか…へこんできた…
―――

アンダンテ

ピアノの先生をしていた母が、俺によく言っていた
歩くような速さで、良い言葉でしょう?と。

歩いていたよ 俺はいつでも。

――

白いYシャツ。彼の背中が朝靄に同化する。
溶けこんでいるみたいで すごく画になっていた。

駆け寄った。柄にも無く手を伸ばした。

振り返る、彼の表情は 知らない人を見るような冷たい瞳で
最初の頃の彼のイメージに近い。

怖い

勢いよく起き上がって 夢だったことと、泣いていることに気付いた。
鈴浦の夢。もう3日は目を合わせていない。
クラスの話し合いで少し話を振った程度だ。俺じゃない、副委員長の若井さんが。

「特に」何もない、という意味で一言呟いていた。
若井さんは、「はいはーい次の人ー」と後ろの席の生徒に話を
移していたが
クラスの連中は、少しさびしそうな顔をしていた。

鈴浦が、前の鈴浦に戻ってしまったような感じで。

鈴浦
その表情やめろ。

夢を思い出す。



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