| しばしの無言。 何を言っているのだろうと半ば呆れながら、太陽の光りのせいで影になりつつある彼を見つめた。
「…バカじゃないの、あんた」
後ろから不意に、女の子らしい、聞き覚えのある声が聞こえた。 言った内容はその声には全く合っていない言葉だったが。
「セ…セ…セディアちゃん!よかった、来てくれたんだね!」
彼女の訪問を心から喜ぶような声を上げながら、触れられはしないであろう彼女の顔を見つめると、彼女の顔が、瞬く間に嫌そうな表情へと変わっていくのがはっきりと見て取れた。
「セディア…ちょっと酷くありませんか、それ。」
苦笑を浮かべながら、手に持っていたティーカップを机の上にそろそろと置くと、そう言った。 この人は、この事務所の主だという自覚なんてものはあるのだろうか。 いつだって髪はぼさぼさだし、黒縁のメガネは全くといって良いほど役に立っていない、それに服はいつだってよれよれだ。
「そんなことない、もっとしっかりしなよ、バカアルド。」
ずけずけと物を言うこの少女は、紛れもなく幽霊だ。 なんともまあ、このしっかりしていない所長のせいで此処に仕方なく通っているらしい。 まあ、この所長と、この彼女の関係は幼馴染だそうなのだけれど。 それでもって、この彼女がこんな風になっちゃった理由も、この所長をかばったせいだと私は聞いている。 要するに、彼女は所長と同い年だから、つまり、私より年上。 本当はセディアさんなのだが、どうしても学生にしか見えない少女相手にさんなんて言いづらい。 一時は彼女も私を敬え、と起こっていたものだが、今ではすっかりこれが定着している。
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