小遣い足りない!
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生きるために、生きる。
[1]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):07/17(木) 22:26:39 HOST:i118-21-77-4.s05.a001.ap.plala.or.jp
「ありがとうございましたあ」
コンビニ店員の、媚を売るような声が頭の中まで響てきた。
俺は袋を手に下げ、駐車場の端っこにとめてある自分の自転車までさっさと歩いた。
二年前にかっこつけのつもりでやったリストカットの跡が目に入って自分自身を不快にさせる。結構深くやったんだっけ……。
自転車にまたがり、軽くかるく左右確認をしてペダルを踏んだ。
そのときだった。
突然、お互いに死角のところから左折をしてきた車と衝突してしまった。激しく、大きい痛みが体中を走る。
生きるために、生きる。
[15]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):08/06(水) 21:36:53 HOST:i118-21-77-4.s05.a001.ap.plala.or.jp
「あー、でもなぁ。結構行くのに時間がかかるだろ」
アダムが頭をかきながら言った。
時間がかかるという事は、遠いということだ。俺は正直行きたくなかったが、今はこの二人の言うことに従うしか選択肢はないのだ。
俺はノアとアダムの会話を何も言わずに聞く。
「リーフさんの家は、街を抜けた山の中にあったもんね」
「そうなんだよなあ。ま、外はもう暗い。今日はもう寝て、明日ゆっくり考えよう」
小さな窓から外を見ると、確かに外は真っ暗だ。
それにしても、ここに時計は無いのだろうか?
いつもならポケットに携帯が入っているのだが、運の悪いことに携帯は家においてきている。それに、ここに携帯があったとしても圏外かもしれない。
「そうだね。ってことで秋、あなたの寝場所はさっき案内した部屋でいい? ベッドがあったでしょ? あれで寝てね」
いきなり言われてびっくりしてしまった。でもそのあとすぐに頷いた。
この制服も着替えてしまいたかったが、寝床があるだけいいと思いノアが汲んできた水で口をゆすぎ部屋に入った。
そして、この世界の慣れないにおいにむせながら、俺は目を閉じて眠った。
[16]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):08/12(火) 20:26:13 HOST:i114-180-28-152.s05.a001.ap.plala.or.jp
目を開けると俺は見覚えのないところに居た。
ああ、これは夢だ。ふわふわした、変な感じがする。
明晰夢――。
でも、ここはどこだろう。あたりを見回そうとしても、体が動かない。金縛り状態というのだろうか。
仕方なく、目だけを動かす。
病室……?
そうか、ここは病室だ! 夢の中でではあるけど、俺は本体に戻ったんだ!
しかし声が出ない。枕元に見える、ナースコールらしきものも体が動かないので押せない。
夢の中でもいい。誰か俺の世界の人と話がしたい。「俺はここにいる、だから心配するな」と、この口で伝えたいんだ。
[17]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):08/13(水) 21:38:17 HOST:i114-180-28-152.s05.a001.ap.plala.or.jp
そうこうしているうちに、目の前が緑色がかかった黒の靄で包まれた。頭が重く感じる。俺は、夢から覚めようとしているのだ。
(やめろ! 夢から覚めるな、俺……!)
もしかしたら、もう少しで看護士が見回りに来るかもしれないとか、金縛りが解けるかもしれないとか、……このまま本体に戻れるかもしれないとか、少しでもその可能性にかけてみたい。
しかし、靄は広がっていくばかりだ。
どうして伝わらないのだろう? 「俺は大丈夫だ」と一言、誰かに言いたいだけなのに――。
[18]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):08/13(水) 22:16:40 HOST:i114-180-28-152.s05.a001.ap.plala.or.jp
*
自分の体がぴくっと動いたのを感じた。
俺は昨日借りた空き部屋のベッドで寝ていた。まぶしい朝日が瞳を刺す。
俺は結局あの靄に勝てなかったのか。
目を細めると、涙で視界がぐちゃぐちゃになった。昨日消えかけていた、「どうして俺が?」という気持ちが再びこみ上げる。
その時、静かなノックの音が聞こえ、ノアが入ってきた。
「おはよう。よく眠れた?」
俺は声が震えるのを恐れてしまい、返事はうつむいたまま頷くだけになってしまった。
「朝食、もう少しで出来るからさっさとこっち来てね」
それだけ言うとノアはまた扉の向こうへ行ってしまった。
[19]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):08/20(水) 18:15:21 HOST:i114-180-18-61.s05.a001.ap.plala.or.jp
そのあと俺は涙を拭いて、ノアとアダムと一緒に朝食をとった。
ただこの世界に歯ブラシなんてもんは無いから、何か食べてもみんな水で口をゆすぐだけらしい(口臭くならねぇのかな……)。
考えてみればここは俺の居た世界と似ているようで似ていない。
言葉は日本語で通用するけど名前はすでに日本人ではない。道具は電気製品は殆どないけど生活には困っていないようだ。
ほかにも違いがあるかもしれない。
俺がその違いを考えようとすると、アダムが俺とノアに声をかけてきた。
「よし、天気は晴れだ。これならわりと早く行けるかもしれない。今から行くぞ、リーフさんの所へ」
ノアは目を丸くさせた。
「今から? ちょっと遠すぎない?」
するとアダムは笑った。
「大丈夫だって。少し疲れるくらいさ」
本当にそうならいいけどな。いや、そうだと信じよう。
俺は体力は人並みにあるから、きっと大丈夫だろう。
[20]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):09/03(水) 18:26:34 HOST:i114-180-27-69.s05.a001.ap.plala.or.jp
「ひとつ聞いておきたいんだけど……『リーフ』ってどんな人?」
口を開いたのは俺だ。
ダムとノアは顔を見合わせ、にっと笑った。
「会ってからのお楽しみ」
ノアがいった。
「ただし彼女は『さん付け』か『様付け』をしないと怒るから」
様……!? ずいぶんと偉そうだな?
ただ今のノアの発言で解かったことは、リーフ(さん)が女だってことだ。「彼女」ってことはな。
[21]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):09/18(木) 18:14:04 HOST:i114-180-27-69.s05.a001.ap.plala.or.jp
*
「リーフ。 どうした?」
山奥にたった古い一軒家のなかに、二人の人影がある。
リーフと呼ばれた者は呼んだ男の目も見ずにいった。
「人が向かってくる……。三人いるんだけど、二人は見たことのある奴。あと一人は、なんだか変わったにおいがする」
リーフは難しい顔をしていたが口調はごく冷静だ。
「メノ。悪い予感がするの。めんどくさいことに巻き込まれたくないから、ちょっと街のあたりを見てきてくれる?」
すると十三くらいの男の子があらわれた。うしろにはそれより少し年下の女の子がついてきている。
「ピウはいい。ふたりもいらないでしょ」
リーフがいうとピウは黙ってうしろへさがった。メノと呼ばれた男は「じゃ」と一言言って古びた家をでていった。
[22]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):09/19(金) 22:29:02 HOST:i114-180-27-69.s05.a001.ap.plala.or.jp
メノは山の中で考えていた。
リーフ様のいう、面倒くさいことってどういうことだろう?
もしかしていつかの夏のような? そのことをいっているの?
リーフ様はもう一人をかわったにおいがすると言っていた。……だとすると本当に……。
小鳥のさえずる声でメノは我に返った。
街へ向かう小道は、彼を迷わせるようにぐにゃぐにゃと曲がって、ときに分かれている。メノはそれに戸惑うことなく山を降りた。
[23]馬鹿娘☆ (ZAFwxvL4/6):10/13(月) 21:10:26 HOST:i58-93-195-104.s05.a001.ap.plala.or.jp
*
小屋からでて、40分かそこらだろうか。ずいぶんとひと気の多いところへ出たようだ。たまに怪しげな店も見かける。
コンクリートなんかここには全然なくて、あるのは土や草や砂利。
「ねえ、ノア。なんなの? ここ」
俺は2人の後ろにふらふらと歩いてついてきている。
「街の入り口……かな? また機会があればちゃんと案内するけど、このへんは暴力を平気で振るう人も多いわ。気をつけて歩いてね」
暴力を平気で振るう人――。
わけのわからない不良とかそんな感じだろう。どの世界にも、そういう人はいるんだな……。
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