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変人博士

[1]きょーじー:05/29(木) 23:19:54 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
亀ペースで更新させて頂きます

[35]きょーじー:09/07(日) 15:35:44 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 枯れた植物、空一面のハエ。いや、それは関係ないが嫌な予感がした。
 
 井時 晶は廊下を駆ける。優等生で通っている方だがそんなものどうでもいい。
 
 井時は普段穴に住んでいる。暗闇で研ぎ澄まされた耳は心音だけで人とその感情を知る事が出来る位だ。
 
 何故、彼女はその様な生活をしているかは今は言うまい。
 
 狙いは理科室。そこで苦痛の心音と、社の地獄の底から響くような唸り声を聞いた。
 
 その距離約一キロ。しかし彼女は確かに聞いたのだ。
 
 理科室の戸を開けるとそこには社が、
 
 否、
 
 『社だったもの』が居た。
 
 金の目を光らせ、額からは角を三本、後頭部からは山羊の様な角を生やし、血管の様な物が全身を巡る。 
 シルクハットと白衣がかろうじてそれを外見で社と理解させた。
 
 それは叫ぶ。注射を嫌がる子供。歯医者のドリルで泣く子供。それらの叫びに酷似する波長の叫びだった。

[36]きょーじー:09/07(日) 15:55:42 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 この世に生物は大量に居る。しかし殆どが未発見。
 
 だから未確認の生物の『生態』すら『病』で済ますパターンがあっても不思議では無い。
 
 しかし、ある世界ではその生物の一種は確認済みだ。
 
 人に寄生して全身に広がり生命力を奪う生物。宿主の生命力はその生物によって吸い尽くされ、身体だけ残る。
 
 昔の人はそれの仲間を『ゾンビ』とも呼んだし、『吸血鬼』とも呼んだ。
 
 
 昔、『魔王』と呼ばれ、人々に発明で悪さをしていた人間が居た。それは退治されたが彼の発明は世界に散らばった。
 
 彼の意志は、大分省略するとある人の二重人格として復活する。
 
 彼は二重人格をする内に自分の発明が悪用されている事を知り、後悔した。
 
 しかしその処理を考える前に彼の意志は突然表れなくなる。否、表れることが出来なくなったのだ。
 
 しかし宿主に発明品の処理を頼まない。宿主にはせめて普通に生きて欲しい。
 
 彼の発明、『獣座大使』。それは粒子レベルで物を改造出来るが意志を乗っ取られる危険のある代物。
 
 どう転ぶかは社の精神力次第である。

[37]きょーじー:09/07(日) 16:15:45 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 獣座大使を打ち込んだ社。目の前に立たされた井時。
 
 向き合う。井時の意識は遠のかない。それは寄生体は獣座大使により既に無くなったからか、それとも彼女の意志の強さか。
 
 しかし立ち塞がるだけで精一杯だった。足が震えて思うように動けないのだ。
 
 勿論、社だったものは動ける。でたらめな腕力を振りかざして殴りかかる。
 
 が、拳は当たらない。当てさせない。井時は思う。
 
 これを外に出してはいけない。『魔王ロラン』に何度も救われた命を無駄には出来ない。
 
 そして社も生かす。ならばどうする。
 
 気絶させる。
 
 思考が辿り着くと第二撃、もう片方の拳が迫る。が、『足で』受け流した。
 
 狙いは後頭部の捻れた角。もう片足で踵を上げて降り下ろす。しかしかわされる。
 
 井時はある人に習った格闘術の構えをとる。足を主体にした技だ。
 
「か、かかって来い!」
 
 その眼はお互いに悲痛だった。

[38]きょーじー:09/07(日) 16:31:46 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 井時の顔は耳まで赤くなる。何故か?
 
 「かかって来い」と言った時には既に社は元に戻っていたからだ。
 
「ハッハッハ。君は私に喧嘩を打ってどうしたいのかね?」
 
 冷静な答え。しかも少しわざとらしい。余計に頭を抱えたくなった。
 
 
 微笑んで社は珈琲を入れる。塩はどれ位入れるかと聞かれて勢いで砂糖と間違え5杯と答えそうになり、必死で首を横に振る。
 
 綺麗な花のコーヒーカップ。もしかしたらとても良い生まれなのかも知れない。
 
 向こうも向こうでコーヒーカップをかき混ぜながら、ゆったりとした雰囲気で口を開く。
 
「さて、今回の件だが…」
 
「何故、コーヒーカップが二つあるか知りたいかね?」
 
 目を見開いたのは井時だ。自分がここに居るのを知っていた。
 
 まさか、これすら、
 
「そう。私の『発明』だよ。君」
 
 背筋が凍る。

[39]きょーじー:09/07(日) 17:01:50 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 「疑問は、始めて会った時だね」
 
 貴族よろしく優雅に珈琲を啜るのは社。今、この服装がタキシードでも誰も突っ込まないだろう。
 
「何故、君は私を始めて見たとき私に振り向かなかったかだ。泣いているのは知られているのに、振り向かない」
「そ、それは余裕が無かったからで…」
 
 スプーンを井時に向ける。異議ありとでも言わんとしてるかの如く。
 
「それは私が語ってからだ。本当は違う。私が血を吐いたからだ」
 
 そして再び珈琲を啜る。
 
「君に余裕が無い。それは当たりだが、違う。君は私を見るならば気を使わざるを得ない。そういう意味で余裕が無かった。
 つまり君は私が病人という事を知っていたのだよ。あの、泣き声の中、音のみで!」
 
 前にのめりこめば井時は冷や汗を垂らしたような顔で後ろに下がる。
 
「そして、君の歩き方。あれは格闘技をしている者のそれだ。軸などがはっきりしてる。
 そこまで解れば君の登校時間に合わせれば良い」
 
 そこまで言うと井時が反論しようと前に出る。
 
「で、でももしボクが欠席した時は…」
「前日の声で風邪かどうか解らぬ位では天才ではないよ」
 
 勝ち誇った笑みを浮かべた。
 一息。
 
「だから私は君が私を止めてくれると信じていた。君の性格だからね…」
 
 珈琲を完全に啜る。利用出来るものは利用する。それが、発明。

[40]きょーじー:09/07(日) 17:15:21 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 今日は校舎が爆発した。きっと社のせいだろうがそれも明日には直るだろう。
 
 井時は溜め息をつく。社はあれの後遺症か両目が金色になっていた。しかし誰も口にしない。
 
 社の感覚に皆麻痺しているからだ。
 
 今日もばか騒ぎは始まる。向日葵 社が楽しむ為に用意した発明で。
 
 その発明はこれからどう利用されるかは知らない。しかし一つ言える。
 
「ロラン…、君の発明は人を救ったよ」
 
 視線の先には竹刀を持つ近藤に追いかけられて、カメラを持つ黒磯に追いかけられ、元気に走り回る社が居た。
 
 彼は笑っていた。

[41]きょーじー:09/07(日) 17:18:33 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
 『意志の集う人』 
 〜エピローグその1、変人博士〜
 
 完。

[42]きょーじー:09/07(日) 20:06:13 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
捕捉。>>40スレ目の推理は>>13スレ目の事です。少し間違えました。

[43]きょーじー:09/07(日) 20:07:33 HOST:a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp
あ…>>42の『>>40>>39』です。すみません…。

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